
インタビュアー今日は志賀さんのふるさと、いわき市におじゃましています。
小名浜の港、平日は「アクアマリンふくしま」や「らら・ミュウ」の辺りも人もまばらで、よく晴れてホントに気持ちいいですね。
志賀そうですね。私 現在は内陸の福島市にいるんですが、いわきは県内でも唯一冬場でも青空が広がるんですね。
こちらに帰ってくると いつもスッキリ晴れていて気持ちいいって思うんですね。
インタビュアー北隣の双葉郡もそうですね、大熊町も。海洋性気候と言って、例年この時季も降雪がわずかで、比較的 温暖な土地なんですね。
それで、そんな穏やかな土地柄なんですが、最近いわきに来るとやっぱり学生の変化には目が行ってしまいますね。
のっけから固い話題で恐縮ですが、私 東京とこちらを十数年 往復しておりまして、東京のブームや風俗がしばらくするとこちらに伝播してくることがよく分かるんです。この前 北海道のはずれの知床の町では女子高生が皆ルーズソックスを履いていたのを見てやっと来たかと思ったものですが(笑)。
ただ、2・3年前から、いわき駅に下りると だらしのない格好の男子高生がホームに地べた座りをしていたり、電車内で堂々とタバコを吸いながら騒いでいたり、これはちょっと酷いですね。注意すれば逆ギレするし。
志賀さん、毎日 県内のニュースに接していらして、学生の乱れはいわきに目立つ現象なんでしょうか。
志賀学校が荒れてきていることは確かですね。
私の母校のいわきの中学校では学生が校内で焼き肉をする生徒もいたそうだし(笑)。
あと、以前 高校の朝の読書運動について取材したのですが、それは、朝授業が始まる前のホームルームの時間を利用して10分だけ読書をして心を落ちつかせるとりくみで、今 県内の小中高校 合わせて全体の4割を越える 419校で実施されているんですね。でもそれを取り入れる前、ある高校では、ベランダから飛び下りたりたり、物を落としたりは日常茶飯事だったそう。校長先生によると、朝の読書のおかげで校長室まで聞こえていた生徒のさわぎ声もおさまって、落ち着いてきているそうなんです。
まあ、朝の読書がこれだけ広まる背景には荒れた学校の現実があるんですよね。
インタビュアーそうですね、私の学生の頃はわるさをすれば先生に殴られもしたし、学校のつとめのように一部の先生は恐い存在でしたが、現在は体罰は厳禁だし、服装やヘアスタイルもずっと自由になりましたね。それに志賀さんを前に恐縮ですが、教員の問題はわりと小さなことでもメディアに採り上げられたりします。
そんなことで、学生が乱れても学校として毅然とした態度が採れなくなっていると思うんですね。エスカレートすれば停学・退学の処置しかないし、学校をまとめる実効的なスベがないようです。
もちろん、ここには先生と学生の信頼関係をどうデザインするかの根本的なテーマがあるんですが、ただ、学級崩壊まで行ってしまうと親と同様に先生に厳とした体罰を認めてはということも言われていますね。頭からなめられることのないように、抜かぬ刀にも威ありで。
志賀やはり一番には親の側の問題が大きいのではないでしょうか。少子化が進むし、子供に甘い傾向が拡がって。学校がそのしわ寄せを受けている感じ。 体罰には賛成しないんですが、しつけは愛情を持って厳しくすれば、わかってもらえるんじゃないでしょうか。その子それぞれにも接し方が違うことも考えて。
インタビュアーまず家庭と学校のそれぞれの責任を明確にしないといけないのでしょうね。
親や家庭のつとめをハッキリさせた上で、学校の役割を定義する必要があって。
そして、学生に限らず「人権」というものを拡げていくと現実の社会秩序と矛盾をきたしますから、社会的に法的に一つ一つ線引きが要るんでしょうね。
覚醒剤の使用だって、自分の身をダメにするだけでなく、幻覚作用が傷害事件に及ぶから社会としては認められないわけですから。
志賀あと、環境も影響しますよね。アメリカのある町で犯罪が多くなって繁華街も人気がなくなっていたので、町ではなんとかしようと思って、まず清掃車を買って町のゴミ拾いから始めて、壁の落書きを消して、見た目からきれいにしていったの。
続ける内に悪がたむろしなくなり犯罪も少なくなり、客足が商店街に戻ってきたって以前テレビで見ましたけど、やっぱりきれいなところや美しい自然があるところには悪い心も育ちにくいのではないでしょうか。
インタビュアーそうですね、真っ白い壁にペンキを塗るって罪悪感わきますから(笑)。

インタビュアーさて、少しやわらかい話題に(笑)。
福島のような地方でも職場や家庭で男性と女性の役割関係がどんどん変わってきてますよね。これまで男性または女性だけとされてきた職種の垣根が取り払われてきているし、家庭ではパートタイマーも含めて共稼ぎが普通になってきて、食事・掃除は"主夫"がという家庭も。
恋愛だって今では「オレについてこい」的な男性はごく少数派でしょう。女性も望んでいないかも知れませんが(笑)。
そこで、いわゆる「男女共同参画社会」の実現が言われますけれど、これは職場や家庭の様々な「決定の場面に女性が参加することがポイント」とよく言われますね。この点について、志賀さんは何か問題意識のようなものをお持ちでしょうか。
志賀私、お風呂で本を読むのが好きなのですが、先日 読む本がなくて中学生の世界史の図録、ひっぱりだしてみたんです(笑)。
原始はいいのですが、ローマ帝国や中国の戦国の歴史を湯船で眺めているうちに、この世は男社会になるはずだよなあって思ったんですよ。だって、まだ動物的な本能が逞しい紀元前の頃に、男性はその欲望として領地を奪ったり、時には女性も奪ったりして征服する欲望があって戦さをしてきたけれど、一方女性は家や家族を愛して平和を好むでしょう。どうしたって、強いものが征するから、女性の世界は壊されてしまう。歴史を見てみると争いの繰り返し。いつの間にか男性主体の世界になってしまったのもうなずけたんです。
でも、これからは違いますよね。単に力が物を言った時代からだいぶ経つのだし、21世紀を迎えていよいよ女性の時代ですね。
インタビュアー平塚雷鳥らが女性解放運動を始めてもう80年ですね(笑)。
あと、実際「数」の問題は大切ですね。会議でも女性が少なければ発言も遠慮がちになりますから。女性中心のミーティングに男性が入ってみると分かるんです(笑)。
そもそも男性本意の社会なんだから、女性の意見を反映させようというなら、何か決定の場には女性が多いくらいで良いのかも知れませんね。
社会の男女平等を実現させるには何でも一度女性上位に振り子を振る必要があるわけで、県が二本松市に設けた「男女共生センター」の名称も潜在効果的に「女男共生センター」にしなかったのは残念だなあと思ったものですが、「女と男の未来館」とちゃんと別の名称があったんですね、失礼しました。
志賀ちょっと前に「地図の読めない女、話しを聞けない男」という本がベストセラーになってましたよね。タイトル、話しを聞けない男が始めだったけ?(笑)それで、男脳、女脳のしくみについて書いてありましたが、それぞれの長所を生かすようにできればよいと思う。歩み寄りが必要ですね。
私の今の仕事で言えば、アナウンサーでも男性は集中力があるけれど堅くなりがちだそうで、女性はその点ムードを察して明るい番組なら柔らかい表情や口調になったりして緊張を出さないように出きる傾向があると思う。女の人は嘘が上手いっていうでしょ(笑)。でも、その分、雰囲気だけで中身がなくなりがちという弱点もある。
だから、男性と仕事をしていると勉強になることたくさんありますね。
インタビュアー「男高女低」というと表現が悪いですが、果たして日本人にそんな意識が消える日が来るのかなと思ったりしますね、それはどんな姿だろうって、北欧の社会を見聞きして。もっと若い世代では意識が進んでいるのかも知れませんが。「主婦」が死語になったり、人々の頭から「男は外、女は内」のイメージが消えた日には内閣にもズラッと女性が並んでいることでしょうし、それはシンボリックでしょうね。 女性の男性化ももっと進んでいるのでしょうか(笑)。
志賀歩みよって、女性が男性の良い面を吸収していけば、ある意味 男性化と言えるのかもしれないけど、それはそれでいいと思う。
頭脳明快で、筋道 通った強い信念や冷静さ、優しさ、暖かさ、男性の良い面と女性の良い面を併せ持った人なんて、人類の究極の進化の形と言えますよね。
そんな人になら国も任せられるでしょうね。
インタビュアーそうですね。イギリスのサッチャー元首相は「鉄の女」などと言われましたけど、それは彼女の意思や信念の強さを言ったもので、実際は非常に物腰が柔らくて周囲に丁寧で、女性の振るまいをわきまえている人だそうです。私の尊敬する政治家であり女性なんですけど、あくまで"女性"を貫いていて惹かれるんですね。
はてさて日本女性のメンタリティはどう変わるのでしょう(笑)。
志賀強さも優しさもすべて備われば、男性に依存するメンタルの弱い部分もなくなり、より素敵な男女関係が築けますよね。嫉妬とかそういったものがなくなる分。だけど、それを恋愛のスパイスだと思っている人にとっては味気ないものになるのかも。
でも、私「オルランド」という大好きな映画があるんですが、その主人公が理想の女性なんです。ラストシーンでイギリスの森のような公園で小さな娘とたたずんでいるとき、頭上に天使が飛んできて歌うんですが、その歌詞の中の「男でも女でもない。ただ私がいるだけ」というフレーズが大好きなんです。ぜひ、観てみてください。
インタビュアーところで、キャスターというお仕事ですが、あるテレビ局の女性アナウンサーさんが「この仕事は芸術家のように何か作品を残せるわけでもないし、日々過ぎて行って、空しいところがありますね」とおっしゃっていたのを印象深く聞いたことがあるんです。難関の入社を突破して、人一倍いろいろ努力を重ねて、でも局を離れたら(手元には)何も残らないと。
しかし、志賀さんのお仕事観はそれとはちょっと違う感じがしますね。キャリアとか具体的な財産を築くことより、仕事を通して感動があってその満足感があればそれでいいと。潔い。
志賀この仕事で何も残らないということはないでしょうね。私自身、テレビを通して自分の見せ方を学んだし、視聴者の方からどういう風に見られているか勉強できたし。知ったり学んだりすること多かったですから。
何か作品を残せたとしても持っているだけでは仕方ないし、展示できたとしても見る人にとっては一時のことですよね。結局その時その時の"感動"がすべてじゃないでしょうか、見る人にとっても。
幸せって自分の満足感だと思うんですね。自分としてはそれだけ残ればいいかなって思うし、そんな風にやっていきたいですね。
インタビュアーなるほど、志賀さんらしい。自分の作品のようなものがあって大勢に披露する機会があったとしても、見る人にとっては一時のことだし、評価などは向こうの問題だしと。ご自身の感動・満足がポイントなんですね。
でも、例えば志賀さんという活ける作品が全国のお茶の間に登場する機会があれば、それはご自身 大きい感動でしょう? やっぱり作品づくりお留守にはできませんよね(笑)。
さて志賀さん、4月から仙台放送局にご栄転ということで、おめでとうございます。
夕方のニュースの顔、早や丸3年でしょうか。明るい季節の話題、重い事件のニュース、毎日いろいろお伝えいただきましたね。双葉郡にもたびたびお越しいただいて。
私など疲れて仕事から帰ってテレビを点けるといつも志賀さんの笑顔があってホッとしたり・・・・・昔、よく見ていた番組が最終回ってなると寂しい気持ちになったりしたでしょう。そんな視聴者 双葉郡の知っている方だけでも指折り数えられるんですが、志賀さんそういう人達の間に"時代"を作られたと思うんですが。
志賀それはちょっと・・・私そんな大したものじゃないですよ(笑)。
そんな私でも、この仕事を通していろんな経験が出来た事を、局の方と視聴者の皆さんにとても感謝しています。
インタビュアーそれでは、志賀さんの「ザ・ヴォイス」はこれからも続きますが、NHK福島の顔とは間もなくお別れということで、ご挨拶をいただけるでしょうか。

志賀この3年間は私の人生の中で、楽しいって言えるものではなくて、つらい時も、その方が多いかな。
自分の実力のなさに嘆いた一年、練習に関わらずあまりのびなかったこと、思い悩んだことたくさんありましたが、つらいことの方がある意味よい想い出になるんだなって実感しています。それに大変な分、上手く伝えられた時の満足感は格別でした。
こうした機会を与えてくださったNHKの方々、そして見守ってくれた皆さんに繰り返しになりますが、本当に感謝しています。
私の尊敬する上司が教えてくれた言葉でフランスの作家の言葉「人間はその年齢によって咲かせる花がある」を胸に、これからも自分に水と肥やしを与えてきれいな花を咲かせたいです。
インタビュアーますますのご活躍、こころより応援しております。
(平成13年2月9日、いわき市小名浜にて取材)