「町民主体の復興」を目指して


施政方針


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【大熊町長 渡辺 利綱】

 国におきましては、平成24年度予算政府案が国会に提出されました。東日本大震災からの復興、経済分野のフロンティアの開拓、分厚い中間層の復活、農林水産業の再生、エネルギー・環境政策の再設計の5つの重点分野を中心に、日本再生に全力で取り組む内容となっています。特に、復興事業に関する経理を明確にするため、東日本大震災復興特別会計を設置されるようです。

 また、平成24年度の県予算につきましても、震災・原子力災害への対応や復旧・復興に対応するため、前年度に比べ率にして75.1%増の積極的な予算編成となったところです。

 大熊町は、町民全員が避難生活2年目を迎えますが、町内の放射線量は依然として厳しい状況が続くと予想されます。現在策定中の「大熊町復興計画」を基に、一日も早く一人でも多くの町民の皆様が大熊町に帰還できるよう引き続き目指していきます。

 平成24年度の町の重点施策につきましては、財源の計画的・重点的配分をもとに、平成24年度一般会計の総額を61億5千万円と定めた次第です。

 歳入につきましては、町税、特別交付税、電源立地関連の国・県等交付金、基金繰入金等で財源措置を講じており、特別会計においても坂下ダム施設管理事業など11件の総額を24億5百43万8千円と定め、避難生活や教育環境の向上、復旧・復興に向けた予算編成となっています。

税務関係

 本町の平成24年度当初予算における税収額は、19億7千6百88万6千円と定めました。避難生活が続く状況のなか、平成24年度においても引き続き税負担の軽減を図るため、減免措置を講じていきます。

 また、徴収につきましては、避難状況を十分に配慮し、県や郡内の町村の動向も参考に適切に対処していきます。

企画調整関係

 原子力発電所の安定に向けた監視についてですが、原子力事故後の福島第一原子力発電所は、「放射性物質の放出が管理され、放射線量が大幅に抑えられている」状況に達し、今後は、これまでのプラント安定化に向けた取り組みから、当面、確実に安定状態を維持する取り組みに移行しています。

 避難を余儀なくされている町民をはじめ、国民全体の不安を解消するためにも、廃炉措置等に向けた中長期ロードマップについて、立地町として県と連携を図りながら、進捗についての監視と情報公開により透明性を確保していきます。

 復興計画の策定と実施に向けた取り組みにつきましては、将来、自然に恵まれた大地を取り戻し、みんなで帰ることを目指しております。当面は、線量の低いところを拠点とし、生活を安定させ、最終的に大熊町を取り戻す構想となっています。そのなかでは、大熊町に帰町しない方々へも十分な支援ができるよう配慮することとしています。

 当面の町民の生活に関わる復興計画につきましては、科学的線量データに基づく避難区域の見直し、線量の低減に直結する除染ロードマップの策定、除染物の保管施設、中間貯蔵施設計画、原子力事故に対する賠償補償など、多くの課題があります。これらの課題につきましては、長期化する避難生活や生活再建のあり方など、町民の皆様に対する支援策全体として考える必要があり、国や県、双葉郡内町村などと、十分連携を図りながら方向性を決めていくこととなります。

 いずれにしましても、町民の皆様が安心して生活できるよう、それぞれの置かれている状況にあわせて、選択できるような計画を策定していきます。

 町民との連携強化に向けた取り組みにつきましては、震災の日まで、生まれ育ち、暮らした大熊町の住民同士の絆を大切にし、絶やさない取り組みをしていきます。

 まず、日本全国に避難されている町民の皆様に、広報やブログ、ホームページなどを使って必要な情報を発信・伝達していきます。また、町民の皆様が各地で絆をより強く広げるための取り組みを支援していきます。

民生関係

 国民健康保険事業につきましては、健全な運営の確保のため、保険基盤の安定化に努めるとともに、安心して医療が受けられるよう体制を図っていきます。

 現在、国保の広域化ということで「都道府県単位化」等が検討されていますが、課題も多く、今後もその推移を見守っていきます。

 また、特定健康診査につきましては、受診対象者も増加傾向にありますので、受診率の増加を目指し、今後も生活習慣病の予防を中心に、医療給付費等の抑制につながる「国保」の運営を目指していきます。

 長寿医療制度につきましては、今年が保険料率の見直しの年ですが、できるだけ、その上昇を抑制するため、基金の活用等が検討されています。将来的には制度・関連法律の見直しがなされますが、平成24年度も、広域連合との連携のもと、高齢化社会に対応できる、安定した医療制度の確保のため、なお一層努力していきます。

 高齢者福祉につきましては、この震災による避難で高齢者だけの世帯が増えており、この方々に対するケアが重要となっています。平成23年度はその対策の一つとして、松長近隣公園仮設住宅団地内にサポート拠点施設を整備しました。今後、いわき地区にもその整備を行い、在宅高齢者ケアの拠点としていきます。また、特別養護老人ホーム「サンライトおおくま」の再開についても積極的に支援し、高齢者福祉の充実を目指していきます。

 障がい者福祉につきましては、平成24年度に身体・知的・精神の3障がいが一元化されるなど、大幅な制度改正がありますので、適切な対応をすすめ、円滑にサービスを提供できるよう努めていきます。また、長引く避難生活におきまして、障がい者を取り巻く環境は大変厳しいものがありますが、避難先関連機関等と連携をとりながら、障がい者支援の充実・強化を図っていきます。

 乳幼児・児童福祉では、中学校修了前までの子どもを対象に実施している医療費助成などを引き続き推進し、平成24年度から始まる子どものための手当を支給することにより、家庭生活の安定に寄与するとともに、次世代を担う子どもの健やかな成長を支援していきます。

 保健衛生関係につきましては、「自分の健康は自分で守る」という健康に対する予防意識を高めるために、各種予防接種事業、検診事業、相談事業等を展開していきます。

 予防接種事業につきましては、平成23年度に引き続き、定期予防接種に加え、中学生女子を対象とする子宮頸がん予防ワクチン、生後2カ月から4歳を対象とするヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン接種を実施します。自己負担につきましては、家庭の経済的負担の軽減及び普及促進を図るため、公費負担とします。

 検診事業につきましては、病気の早期発見・早期治療につなげるよう受診勧奨し、県内外での受けやすい環境を整えるよう努めていきます。

 相談事業につきましては、長期化する避難生活において、閉じこもりやうつ、高齢者の寝たきり、乳幼児の虐待、アルコール依存などを防ぐために、心のケアに重点を置き継続的支援に努めていきます。

 また、町民の交流と憩いの場として平成23年度より開設しています「おおくまサロン」において、仲間づくりや社会参加など、関係機関と連携を図りながら、相談しやすい環境の中で、町民一人ひとりが健康や疾病予防への関心を高めていけるよう取り組んでいきます。

 介護保険事業につきましては、このような時だからこそ、高齢者のために、地域での支え合う取り組みを推進し、地域包括支援センターと保健センターが中心となり、健康づくりと連携した介護予防事業を一層進め、支援や介護が必要になった場合でも、自分らしい暮しを続けられる地域ケア体制の拡充を目指していきます。そのためには、地域全体のやさしい気持ち・声・手が不可欠であり、町民の協力・支援を得ながら、町ぐるみで「やさしいまちおおくま」の実現に取り組んでいきます。

 保育所につきましては、県内外の避難先におきまして、保育所に入所されている児童の保育の継続にあたり、原発避難者特例法に基づき避難先自治体での保育実施のため、情報共有に努めるとともに、保護者負担軽減の支援を進めていきます。

 また、現在実施しています一時帰宅や就労活動、通院等のため保育を要する児童に対する一時預かり保育を継続して行い、支援に努めていきます。

生活環境関係

 生活環境課につきましては、現在、災害対策本部を所管していることから、災害対策本部会議の開催、一時帰宅、事業者の公益立入事務のほか、全国各地に避難している町民の問い合わせ等の窓口事務を行っており、長期化する避難に対応することが主な業務となっています。

 生活環境関係につきましては、避難先での仮設住宅や借り上げ住宅関係のゴミ処理の取り扱い、狂犬病予防などの畜犬等の管理を行っていきます。

 消防関係につきましては、長引く避難生活で消防団員の現有勢力の維持が難しくなっていく中で、現有資機材の保全管理や無人地帯となっている町内の防火用水の確保をはかり、富岡消防署と連携し、町内の火災予防に努めるとともに、復興までの消防団の継続に向けて組織や業務を消防検討委員会を中心に検討していきます。

 交通関係では、大熊町外に避難している現状から、既存の所管団体等の今後の活動を検討していきます。

 また、下水道関係につきましては、除染が開始される大川原地区の管路の被害調査を行い、除染作業員や住民帰還に備えることにしています。

産業関係

 農林水産業につきましては、大熊町全域が「警戒区域」に指定され、平成23年度より一切の営農活動等ができない状況にありますので、補償について、ふたば農業協同組合等と連携しながら、農家等に不利益が生じないよう支援していきます。

 また、他市町村地域での営農再開希望者につきましては、土地情報の提供並びに再開市町村と連絡調整を図り、支援体制を強化していきます。

 商業につきましても農林水産業と同様であり、大熊町商工会と連携し、できる範囲での経営再開支援を行っていきます。

 なお、観光協会におきましては、避難住民の「絆」を深めるため「ふるさとまつり」を、いわき市と会津若松市で開催する予定です。

 現状では、産業課本来の事業ができない状況であり、平成23年度実施した町内の空間線量調査や汚染状況調査を引き続き行うとともに、町復興の鍵が「除染」であることから、国が実施する「除染」に積極的に関わり、協力しながら町全域の早期除染に全力で取り組む所存です。

 坂下ダム管理事務所につきましても、原子力発電所に淡水供給している重要施設であることから、施設への通電を2月に行い、適切な維持管理により発電所に対する淡水供給をいたします。また、町所有施設の中で唯一施設機能が回復しており、事務所周辺の空間線量は毎時2マイクロシーベルト以下、事務所内も毎時0.5マイクロシーベルトと低いため、3月中に国において先行除染を行い、平成24年度より除染対策の拠点として活用していきます。

建設関係

 震災により、道路、河川、海岸等の施設が甚大な被害を受けており、警戒区域により災害復旧工事ができない状況になっていますが、国・県からの指示があり次第、対応ができる体制を整えていきます。

 対応として、町道関係につきましては、災害復旧に直ちに取りかかれるよう、放射線量の高い部分を除いてではありますが、災害査定ができる程度の調査を平成23年度に完了しています。

 平成24年度につきましては、平成23年度の調査をもとに町道の応急工事、安全施設設置工事を施工し、町民の立ち入り時の安全と町内の防火対策、さらには除染作業等の交通路を確保します。

 また、ライフラインの復旧につきましても、町道調査時に被害状況を把握していますので、復興計画に基づき、適時対応が出来るよう関係機関との調整を進めていきます。

 仮設住宅につきましては、引き続き生活に不便な部分の改修を、県担当部局と共に早急に実施し、また、不足する戸数に対しても充足数を確保出来るよう対応していきます。

 今後、恒久的な災害復旧公営住宅に移行するとのことですので、建設場所等十分に調査をし対応していきます。

教育委員会所管

 避難生活が続きますが、将来の地域の復興にかかわり、リードしていくことができる人物を一人でも多く育てていく必要があります。

 また、質量ともに豊かな教育は、コミュニティを保持していく前提条件でもあり、基本方針を次の4つとしました。

 1つめは、教育の原点である「対面と対話」を再確認して教育を進めていきます。

 2つめは、心の動き、心の状態を重視していきます。

 これを子どもたちに当てはめ「国語、算数より心のケア重視」としました。

 3つめは、「読書のまちおおくま」づくりの継続を図っていきます。

 「本の数だけ学校があり、先生がおります。」学力向上、人間づくりに読書は欠かせません。

 そして、4つめは「体験学習の重視」を図っていきます

 ボランティア活動や自然体験などをとおして、豊かな心と生きて働く知恵を身につけていって欲しいと考えていま す。

 学校教育につきましては、避難後の去年4月に、会津若松市教育委員会の全面的なご支援、そして町議会をはじめ町民の皆様のご協力をいただき、ここ会津若松市に幼稚園、小・中学校を同時に立ち上げることができました。文字どおり寺子屋からのスタートとなりましたが、会津若松市をはじめ全国から、そして外国からも温かい応援をいただきまして、大熊町の全幼児、児童、生徒の約50%の子どもたちが元気に1年間学んできました。関係各位に改めてお礼を申し上げます。

 平成24年度は中学校も新しい学習指導要領での学習がスタートします。十分とはいえませんが、町予算で施設の整備、そして教材教具の充実を図っていきます。

 また、こうした時期にはより一層子どもたちへのきめ細かな指導が必要です。県教育委員会へは一人でも多くの教員の配当を強く要望しており、小学校高学年での学年担当制を継続していきます。このように、子どもたちの教育環境を人的に、物的に整備を図り、国の目指す「生きる力」を一歩進め、子どもたちには「社会を生きぬく力」(熟考力、判断力、実行力)を身につけるような指導をしていきます。

 社会教育・社会体育につきましては、教育基本法第13条を踏まえ、平成24年度は「学校を巻き込んでの事業の展開」をめざし、社会教育・社会体育が主役の事業をできる限り推進していきます。

 具体的には、社会教育指導員を中心に、次の2つの方法を考えています。

 ひとつは、会津大学や会津若松市などの生涯学習団体の関係機関と連携を図り、内容の充実を図ると共に、多様な学びの場を設定していきます。

 もうひとつは、ボトムアップ方式で町民の学びたいことを吸い上げて、共に企画と実践に当たっていきます。

 そして、社会教育・社会体育の展開には子どもたちをも視野に入れております。活動する場所もありませんが、知恵を絞っていきます。

 なお、大熊町の先民の遺した文化財につきましては、学芸員を中心にその保護を図っていきます。

 お世話になっている会津若松市並びに市教育委員会との連帯を図りながら、「一歩踏み出す」を合言葉に、私たちもブレることなく平成24年度も進んでいきます。

 以上、平成24年度の主な重点施策を申し上げましたが、国、県、双葉地方が連携して、町民の皆様と行政が一体となって復旧・復興に向けて取り組んでいきます。

 今後とも議員各位をはじめ、町民の皆様のご支援とご協力をお願い申し上げ、私の施政方針といたします。





大熊町長  
渡辺 利綱