平成27年度施政方針

施政方針

大熊町は、全町民が避難生活5年目を迎えますが、今年こそ正念場の年になろうと思います。今年は22回もの町政懇談会を行い、町民一人ひとりがそれぞれいろいろな考えを持っていることを改めて認識させられました。懇談会での意見を取り入れ、帰りたい人、帰らない人、それぞれの支援策を実施してまいります。

町の重点施策につきましては後ほど申し上げますが、財源の計画的・重点的配分をもとに、平成27年度一般会計の総額を167億4千万円と定めた次第であります。町の当初予算としましても過去最大となっております。

歳入につきましては、町税、特別交付税、国・県等支出金、基金繰入金等で財源措置を講じており、特別会計においても坂下ダム施設管理事業など11件の総額を38億9千552万9千円と定め、避難生活や教育環境の向上、復旧・復興に向けた予算編成となっております。


<各所管の重点施策>

◆総務関係

今年の11月には県議会議員選挙、町長選挙、町議会議員選挙が行われます。福島県そして大熊町をどのように復興するべきか、そしてそれを担う人を選ぶ重要な選挙になりますので、適正な選挙執行に努めます。

また、全町民が各地に避難しておりますので、行政区の人達が集まることも難しい状況が続いており、絆が薄れていくことが心配されております。そのため行政区の存続と絆維持を目的として各行政区に補助金を交付し、交流維持活動に役立て、震災以前同様の強い絆を取り戻していただきたいと考えております。

◆税務関係

平成27年度当初予算における税収額を、32億7千339万6千円と定めました。課税につきましては適正な課税に努めるとともに、避難生活が続く状況の中、平成27年度においても、引き続き税負担の軽減を図るため減免措置を講じてまいります。

徴収につきましては、避難の状況を十分に配慮しつつ、前年に引き続き「未納額のお知らせ」等の文書による催告により自主納付を主体とした徴収をおこなうとともに、県の支援制度も活用して適切に対処してまいります。なお、滞納処分につきましては、税務署や県税部さらには双葉郡内の町村の動向を見極めながら検討してまいります。

また、帰還困難区域の家屋の被害状況調査につきましては、空間線量の高さから実施を見送っておりましたが、避難当初と比較すると低くなってきている状況にありますので、27年度から順次実施してまいります。

先に実施しました中屋敷、大川原地区と同様に希望をとり実施する予定でおり、実際の調査は建築士に業務委託をしておこないます。しかし空間線量の高い区域もあることから、現地調査にあたられる建築士の方々の被曝線量に十分配慮しておこなってまいります。

◆企画調整関係

県内の汚染土壌物を、一定期間保管する中間貯蔵施設につきましては、一昨年来の経過、また当町や福島県の状況を踏まえ、国側の条件整備を見据えながら、昨年12月、町としても受入れの判断をいたしたところであります。

多くの町民がふるさとを失うことにつながる苦渋の決断でありましたが、何よりも地権者の皆様のご理解をいただけなければ成り立たない事業であります。新年度に入り、地権者交渉は本格化してまいるものと思いますが、中間貯蔵施設は世界でも類例のない施設であります。

国の責任において十分な地権者の理解をいただくこと、代償となる生活再建に真剣に相談に乗ること、また搬入を含めまして施設の安全性や、更には本施設が設置されることによる本町復興との関わりについて、しっかりとした対応を引き続き申し入れてまいります。

続いて東京電力福島第一原子力発電所の廃炉に向けた取り組みについて申し上げます。本年度は4号機燃料プールからの取り出しが完了しました。今後は1・3号機の燃料取り出しに向けた瓦礫撤去作業が予定されております。

汚染水対策においても、幾つもの課題を抱えておりますが、昨年は地下水の汲み上げ、放流が実施されております。廃炉に向けた取り組みは長期にわたり、かつ困難を極める作業ではありますが、一歩一歩着実に進めていくことが重要であります。

本年1月には従来の安全協定を廃し、新たな協定を締結しました。町としましては引き続き「福島県原子力発電所の廃炉に関する安全監視協議会」を通して現地の状況監視を随時実施し、また常時事業者から直接聴取する等、安全確保に関する事項を確認しながら、同時に周辺地域の安全確保に努めてまいります。

復興計画につきましては、「復興まちづくりビジョン」を踏まえ、この間の環境変化に対応する必要性から、平成26年度は「第二次復興計画」を策定しました。本計画は今定例会に提案させていただいており、これからご審議いただく内容でございますが、避難生活の長期化が見通される中、町民の皆様の暮らしや希望を支える取り組みがますます必要となっておりますところから、「避難先の安定した生活」に資する生活再建支援策と、「将来的な帰町という選択肢の構築」に向けた施策を二本柱として策定しました。

復興計画検討委員の意見や、町民皆様の声を踏まえつつ、次の10年程度を展望した町の方向性や施策を取りまとめたものであります。大熊町は第二次復興計画の策定と、その推進を通じて、「原子力発電所事故からの復興の先導役」となり、町民の皆様の暮らしと、町土・双葉地方全体の復興を牽引していくことを目指していきたいとの思いでありますので、宜しくご審議の程をお願い申し上げる次第であります。

町土復興の前線基地となる復興拠点整備につきましては、現地サイドでは現在、基本調査を実施しているところでありますが、事業実施の前提となる諸条件を定める法律案が今国会に提案されているところであり、成立・施行次第事業に取り掛かれるよう、平行して準備を進めているところであります。

原子力事故に伴う損害賠償については、一部課題が残っている項目もございますが、ほぼ全ての項目にわたって請求が行われるまでにこぎつけたところであります。長期的な避難の継続を余儀なくされている町民の皆様が、これからどのように落ち着ける生活を確保していくか、それぞれの生活再建を進める上での重要な判断材料になるであろうと考えております。

今後は、現在取り沙汰されております、営業所得の終期のように、避難指示が継続することにより発生している損害や補償の取り扱いに注視し、議会のご意見も賜りながら対応を進めてまいる所存であります。

また、町民のきずな維持、情報の迅速かつ平等な配信を目的として、タブレット型の情報端末を配布しておりますが、昨年度はより使い易くなじみ易いアプリの開発を心がけてまいりました。併せて復興支援員制度を活用し、様々な行事の模様や大熊町に伝わる民話の配信、参加型のコーナー等、より気軽に興味の持てる情報提供に努めてまいります。

本年度は、このタブレット端末に加え、既に年明けから開始しておりますが、新たに「見守り機能付き歩数計」、いわゆる「ミルック」の配布を希望者に開始しました。当初は60歳以上の方を対象としておりますが、順次対象を広げ、町民の安心安全に寄与したいと考えております。

東日本大震災の発災以降、大熊町は全国、更には世界の皆様から様々なご支援を受けてまいりました。これら多くのご支援に対しまして、感謝の気持ちを表わしたいとの思いから、昨年末「起き上がり小法師プロジェクト」を立ち上げております。会津の皆さんに感謝の気持ちを込めて、この地方に伝わる民芸品と大熊町のマスコットをコラボした「おおちゃん小法師」を製作し、絵付けは町民が担当することで、町民同士のつながりや生きがいにつながることも目的としております。

デザイン募集には200点の応募がありました。審査を経て最優秀に選ばれた作品を基に、現在町民の皆さんにお願いしながら、800個の絵付けを行っていく予定でありますが、11日を目途として、これまでご支援をいただいた全国の皆様に順次発送する予定であります。

このプロジェクトは、新年度以降、更に拡大して展開させていく構想もありますので、是非皆さまのご協力を賜りたいと考えております。

◆民生関係

国民健康保険につきましては、震災直後から加入者の増加傾向が続いておりましたが、一昨年からゆるやかな変動へと変わっております。

震災発生時と比較してみますと、被保険者数で約1,350人増加して4,118人、医療費総額では約1.41倍増加し、15億5千936万円となっており、1人当たりの医療費も増大しております。

今後も、医療費の増加が見込まれることから、医療費分析、特定健診の受診勧奨及び特定保健指導を行い医療費適正化の取り組みを進めてまいります。

さらに、長期にわたる避難生活が続く限り、国や県へ財政支援を要望してまいります。

現在、市町村国保の都道府県化が平成30年度に実施することが示されました。国の法整備が着々と進められ、保険者が都道府県になるにあたり市町村の枠組みがどう図られるのか、今後も注視していかなければなりません。

特定健康診査につきましては、今年度の受診対象者が減少していることから、日数や場所を再検討し、多くの皆様に受診する機会が得られるよう調整してまいります。

後期高齢者医療制度につきましては、「安定的な財政運営」「保険事業の推進」「安心してサービスを受けられる環境づくり」を基本目標とした広域計画に基づき、今年度も広域連合との連携のもと、激変する社会情勢に迅速に対応し、引き続き安定かつ効率的な制度運営に努めてまいります。

また、「社会保障・税番号制度」の導入に向け、本年度もシステム構築を図ってまいります。

今年度の計画では、10月頃に町民の皆様に「個人番号カード」の取得に関するご案内をお送りします。平成28年1月頃からは、そのカードを利用して「住民票の写しや印鑑登録証明書、戸籍抄本、所得課税証明書」などが、コンビニエンスストアで取得できるサービスが利用できるようになります。全国に避難している町民の皆様にとって、大変便利になると思われます。

本年度は、制度実現のために、業務の見直しや条例の制定・改正、また、システムの設計等、関係機関と協議を行い、導入が円滑に進むよう対応してまいります。

高齢福祉では、長期の避難生活に応じた支援がますます重要となっており、大熊町社会福祉協議会等と連携し「福島県地域支え合い体制づくり助成事業」を活用した「生活支援相談員の訪問活動」「サロン活動」等による、高齢者等の見守りと生活支援活動を引き続き行うとともに、要介護者の在宅介護支援事業を充実させ、また、高齢者等福祉施設整備につきましても、郡内町村と連携を取りながら積極的に支援することにより利用施設の確保を図ってまいります。  障害者福祉につきましては「障害者総合支援法」への適切な対応のため、円滑にサービス提供できるよう、相談事業所との業務委託により県内全域の相談支援体制としておりますが、職員自らも相談・実態調査できるよう研修を進め、関連機関と連携を取りながら、障害者・障害児支援の充実・強化を図ってまいります。

乳幼児・児童福祉につきましては、平成27年度から施行される「子ども・子育て支援新制度」に向け、「大熊町子ども・子育て支援事業計画」を整備・策定し、避難先自治体へ情報提供することにより、子育て家庭に対する支援を図ってまいります。

また、保育行政につきましては、避難先での保育所の利用にあたり引き続き「保育料の一部助成」を行うことにより、保護者負担の軽減を図ってまいります。

また、昨年度に引き続き給付額は減額されますが「臨時福祉給付金」並びに「子育て世帯臨時特例給付金」もございますので、適切な給付に努めてまいります。

避難生活の長期化と広域化により、住民個々への福祉サービス提供が難しい状況になっており、避難先によっては「一部のサービス提供ができない」「遅れてしまう」等の不都合が生じておりますが、全町民が避難している現状に応じた福祉事業を展開しながら、町民福祉の向上に努めてまいります。

保健衛生につきましては、「自分の健康は自分で守る」という健康に対する予防意識を高めるために、継続して保健事業を展開してまいります。

健診事業につきましては、がん等の病気の早期発見・早期治療につなげるよう受診勧奨し、受診率の向上を目指して検査項目の充実や県内外でのより受診し易い環境を整えるよう努めてまいります。震災後の健診結果から、肥満・高血圧・糖尿病・脂質代謝異常の割合が上昇するなど身体の変化が出てきておりますので、生活習慣病などを予防するために、各種健康教室・相談会・特定保健指導等を実施してまいります。

相談事業につきましては、閉じこもりやうつなど避難生活によるストレスを抱えている方が多いため、関係機関と連携を図り、心のケア事業を実施し相談しやすい環境作りに努めてまいります。

放射線健康対策事業につきましては、幼稚園児、小中学校の児童生徒のガラスバッジによる外部被ばく線量の測定、妊婦と18歳以下の子どもへの電子式個人線量計の貸し出しを継続します。

県事業として、甲状腺検査・ホールボディカウンターによる内部被ばく検査が予定されておりますので、県と協力して避難先のより近いところで検査を受けることできるよう体制の充実を進めてまいります。また、県から配布されている「県民健康管理ファイル」を「健康手帳」として活用できるよう、あらゆる機会を利用し周知してまいります。

また、今後とも町民の皆さんの精神的・身体的健康を支えるために、専門職の育成に一層努めてまいります。

介護保険事業につきましては、第6期介護保険事業計画を基として、平成27年度から3年間は、当町の介護保険事業を実施することになります。

要介護認定者数につきましては、依然として高い数値を保ち続けていますが、震災直後に見られました急激な伸びは比較的落ち着いております。介護給付費の増加につきましては、未だ鈍化傾向ながら継続しており、今後団塊の世代が介護保険の第1号被保険者に加わり、介護サービスの利用者の増加が見込まれるため、介護予防の必要性を周知し、更なる介護予防事業の強化を図ってまいります。

平成27年度からは、介護保険に関する様々な制度が見直されます。避難先におきましても町民が制度を滞りなく活用できるよう避難先自治体などとの連携はもちろんのこと、原発避難者特例法による事業の実施について要望してまいります。

いわき市方面へ避難先を移される方が今後ますます増加していくことが予測されますが、介護保険の手続きや問い合わせなどについても滞りなく対応できるよう、地域包括支援センターの体制を整えてまいりました。今後も高齢者の不安解消、生活支援と適切な介護支援のため、関係機関との連携を強め地域包括支援センターの機能強化を図り、町民に寄り添った包括業務の展開が行われるよう努めてまいります。

なお、引き続き平成27年度の第1号被保険者の保険料の減免と利用者負担金の一部負担軽減措置を行い、利用者の経済的な負担を軽減してまいります。

◆環境対策関係

本年度も災害対策本部の運営、町民の一時立入、公益立入業務のほか、各地に避難されている町民などからの放射線等の問い合わせなどの窓口業務を継続して行ってまいります。

生活環境関係につきましては、仮設住宅でのゴミ処理の取扱・狂犬病予防注射などの畜犬管理、共同墓地の環境整備などを行ってまいります。

防犯対策につきましては、放射線量の高い帰還困難区域の防犯対策として、26年度に設置した防犯カメラや車両のナンバー認識システムでの監視により犯罪の抑止に努めるとともに、帰還困難区域以外の大川原・中屋敷地区については、見回り隊による巡回警備を継続して実施することで、町民の財産を守ってまいります。

防災関係につきましては、防災行政無線や、エリアメールによる携帯電話への警報通知など、町内立入時の町民の安全確保に努めてまいります。また、避難先におきましては、仮設住宅の自主防災組織の防災力強化のため、消防署をはじめ関係機関の協力を得て研修等を引き続き実施して、町民自らが身を守る体制の強化に努めてまいります。

消防関係につきましては、富岡消防署との連携を強化するとともに、町内の消防水利の確保や防火帯の配置等を図り、町内の火災予防に努めてまいります。また、避難により消防団活動が困難になっておりますが、消防団の資機材の保全管理や町内の防火用水等の確認など継続的な活動を実施するとともに、検閲や訓練を実施し、帰還まで消防団の継続強化に努めてまいります。

放射線対策につきましては、継続して町内の大気、水質、土壌の環境調査や放射線の経過調査、無人ヘリコプターによる詳細な環境調査を実施し、町民の皆様に結果を報告してまいります。

また、廃炉作業に伴う粉塵の飛散に備え、既存のモニタリングポストを活用するとともに、飛散方向を予測するために風向風速計を設置し、避難誘導の際の情報収集体制の整備に努めてまいります。

◆生活支援関係

避難生活が長期にわたる中、安定した住まいの確保は、より重要な課題となっております。現在、県営事業として整備が進められている復興公営住宅4,890戸ですが、第1期募集分への大熊町民の入居がようやく始まり、会津若松市の古川町団地などでは新居で新年を迎えることが叶いました。

しかしながら、平成28年度中としていた整備完了時期については、宅地造成に時間を要するなどの理由で遅れが生じ、特に入居希望の多いいわき市などに建設が予定されている1,000戸あまりが、平成29年度にずれ込む見通しとなることが公表されました。

町としましても、各地域の個別協議に参画し、早期整備が図られるよう関係機関に働きかけるとともに、平成28年3月末まで延長されている民間借り上げ住宅を含む応急仮設住宅の供与期間についても、避難指示が続く限り制度の延長を要請し、復興公営住宅などの恒久的な住まいへ円滑に移行ができるよう支援してまいります。

応急仮設住宅ですが、建設から4年近くが経過し、経年劣化による不具合の増加が懸念されます。今後も県担当部局と連携し、維持管理・修繕を進めるとともに、県で対応の難しい案件については、速やかに町が対応するなど、居住環境の改善に努めてまいります。

年数の経過に伴い、自立再建による入居者の減少や、用地提供者から土地の返還を求められるケースが出てくるなど、応急仮設住宅を取り巻く環境にも変化が生じ始めております。避難生活を少しでも安心して過ごしていただけるよう、引き続き自治会運営を支援するほか、買い物・通院を支援するバスの運行を続けてまいります。

また、東日本大震災による津波で被災した方々の住宅再建に対する補助を継続するなど、早期の生活再建につながる取組みも進めてまいります。

コミュニティの維持につきましては、県外においては、国の復興支援員制度を活用し、昨年7月に埼玉県さいたま市にコミュニティ支援関東事務所「梨の実スペース」を開所しました。県内では、避難者数の多いいわき市に常設の交流サロンとして「梨の実サロン平」を今年1月にオープンしたところであります。今後、交流会の開催などを通じて、各地域におけるコミュニティの立ち上げを支援するほか、会津若松市や郡山市における交流サロンの開設も目指してまいります。

また、町民の皆様が絆をより強く広げるための活動を支援するほか、ふるさとや避難先とのつながりを維持する取組みについても進めてまいります。

◆復興事業関係

はじめに、ライフラインの維持管理につきましては、震災により道路、水路、河川、海岸等が甚大な被害を受けており、高線量区域のため本格的な復旧工事ができない状況にあります。町民が立入る際の安全な通行を確保するため町道・農道の維持管理を実施し、また、町内の防災・防火対策として消防署と協力しながら重要な水路の通水を図るための維持管理を実施し、それぞれに対応しながら、今後もライフラインの保全対策をしてまいります。

また、本格除染が完了した大川原地区や中屋敷地区につきましては、今後も関係機関と協議しながら道路・農業用施設・上下水道等の現地調査実施に伴い本格復旧を進めるとともに、大川原地区内での復興拠点の整備に向けた町づくりビジョン・復興計画に併せて、現在基本計画を策定しており、今後は関係者・関係機関と調整を図りながら基本設計の着手に取り組んでまいります。

次に復興に伴う除染計画でありますが、避難指示解除準備区域(中屋敷地区)・居住制限区域(大川原地区)につきましては本格除染も完了し、今後も関係機関の協力を得ながら、事後モニタリングを実施してまいります。また、帰還困難区域の除染につきましては、除染の完了した大川原地区から近い場所400haについて、現在除染に向けての事前調査を実施しており、本格除染に向けて進めているところです。除染により線量の低減を図り、区域の見直しを視野に入れながら今後も早急な帰還困難区域内の除染実施を進めてまいります。

また、復旧・復興に対する関係機関への要望につきましては、帰還困難区域内の除染の実施、除染に伴う廃棄物焼却施設の整備はもちろんのこと、常磐自動車道が3月1日に全線開通となったことから、町の復旧・復興そして緊急時の避難路・廃炉に向けたスムーズな交通体系を確立するためにも、インターチェンジの設置を強く要望してまいります。

坂下ダム管理関係につきましては、ダム周辺の除染も完了し、震災以前の姿に戻りつつあります。ダム管理システムについては徐々に復旧しているものの、今後も警報局を含めた完全復旧及びダムの維持管理に努めてまいります。

また、ダム管理事務所内に現地連絡事務所が設置されており、町内の保全活動等、町内における支援体制が確立されております。今後も、坂下ダム周辺が、町民の癒しや休息の場として利用できる環境づくりを目指してまいります。

◆産業建設関係

農林水産につきましては、避難指示や農産物の作付制限により、震災以降、農業活動は行われておらず、農業意欲、帰還意欲の低下が深刻な問題となっております。帰還に向けた主な取り組みとしまして、福島大学・京都大学に協力し、居住制限区域、帰還困難区域の植物の放射能測定調査を実施するとともに、福島県の営農再開支援事業の一環として、大川原地区に稲作栽培実証田を作り、引き続き調査を実施してまいります。

農地保全につきましては、昨年度設立された、大熊町農業復興組合を活用し、農地保全管理を目的に草刈、耕起等を実施します。新たな農地保全管理事業としては大川原地区の農地約20haに太陽光発電を設置し、農地保全管理及び売電利益の一部を農業関連・福祉関係に活用し、町復興に寄与する再生可能エネルギー発電事業を実施してまいります。

また、大熊町復興ビジョンにも示されている密閉型植物工場を平成27年度に整備します。工場で栽培した作物を東京電力の給食センターをはじめ大手小売店へ供給することで、農業に対する希望、農業者の帰還、雇用の創出、営農意欲の向上を図り、将来的には植物工場を核としたコミュニティの形成を図ってまいります。

また、避難先での営農再開を目指す意欲ある方々へは営農相談会などを開催し、福島県やふたば農業協同組合等関係団体と連携し積極的に支援を行ってまいります。

商工業につきましても厳しい状況下にある中、町外で事業再開をされる方はまだ少数ではありますが、震災以降、次第に増えてきております。一方大熊町の復興を目指し、除染作業や維持・復旧工事等に携わっている事業者もおりますので、今後とも大熊町商工会と連携をとりながら経営支援をおこなってまいります。またハローワーク等の支援を受けての就職相談も引き続き継続してまいります。

観光につきましては、福島県及び県内市町村をあげて平成27年度に全国に向けた観光キャンペーンを予定しております。大熊町としては積極的に関われないのは非常に残念ではありますが、「語り部」に依頼し観光客などに震災や避難生活の状況を語り継いでいただき、震災の風化防止などに協力してまいります。

なお、ふるさとまつりは、昨年に引き続きいわき市と会津若松市での開催を計画し、大熊町民の交流の場をひとつでも多く設定してまいります。

下水道につきましては、中屋敷地区・大川原地区を除く全地域が帰還困難地域のため、震災による被害調査が行われていない状況でありますが、大川原農業集落排水処理施設については、基本的な被害状況調査が終わりましたので、復興拠点整備に併せて整備してまいります。


◆教育関係

4月から法改正により教育委員会の制度、運営が変わります。これを受け、総合教育会議で教育に関する大綱を定めることになっております。

当然この大綱を踏まえての教育委員会における基本方針を定めることとなりますが、現時点でのものを申し上げます。

 

新年度の基本方針につきましては平成26年度のものを継続してまいります。すなわち、「対面と対話」、「心のケアの重視」、「読書活動の推進」、そして「体験学習の積極的導入」の4つであります。

困難な状況は続きますが、教育に停滞は許されません。この4つの基本方針のもと、「人材の育成なしに、町の復興なし」を肝に銘じて学校教育を中心に家庭教育、社会教育を進めてまいります。

学校教育について申し上げます。会津若松市教育委員会の全面的なご協力をいただいて幼稚園、小・中学校を立ち上げてから4年が過ぎようとしております。学校立ち上げ時には700名を超えていた園児、児童生徒は減少を続けております。この傾向は今後も続くと思われますが、少人数学校・学級の利点を最大限に生かし、きめ細やかな指導の徹底を図り、学校教育の質の向上に引き続き努めてまいります。

そのために、次の点に力を入れてまいります。

まず、子どもたちの心の安定を図るために、一人ひとりの心のケア、サポートを重視し、スクールカウンセラーなど学校に必要な人員を配置して取り組んでまいります。これは、会津若松市に立ち上げた幼、小・中学校はもちろん、いわき市を中心に県内各地に区域外就学をしている子供たちをも対象にした取り組みも進めてまいります。平成25年4月に会津大学、同短期大学部との教育連携の協定を結ぶことができました。この協定を今年度も継続し、授業の質の向上を図ってまいります。また、ヤングアメリカンズをはじめ、豊富な体験学習をとおして子どもたちが学びの楽しさを味わうよう努めてまいります。

更に、ここ2年間新たな試みとしてICTの活用を授業へ導入し、研究を進めてまいりました。平成27年度からはこの成果を踏まえ、更に児童・生徒一人ひとりの良さを生かす授業を構築してまいります。

12年間継続してきました読書活動については幼稚園、小・中学校の発達段階を踏まえ、校種を越えて平成27年度も取り組んでまいります。特に「調べる学習」については全国コンクール主催団体からその取組が評価され、平成26度末に表彰されました。これを励みのひとつとし、更に、調べる学習を通して子どもたちの「主体的学習と思考力の向上」を目指します。

そして、4月には中高一貫校の「ふたば未来学園高校」が開校いたします。平成26年度から導入しました「ふるさと創造学」を中心に連携を深め、双葉郡の子どもたちが小学校、中学校、高校と一貫した学力観で学び通せるように努めてまいります。

なお、少人数学級であることより生ずる集団活動の弱さについては、小学校教員は熊町小・大野小とも兼務とし、合同学習に取り組むとともに、幼稚園、小・中学校の連携・協力学習、更には市内の幼稚園、小・中学校等との交流学習でこれを補ってまいります。

次に、社会教育、社会体育につきましても基本方針に基づき「自主性と交流」を合言葉に、活動場所や講師の確保の工夫をしながら、町民の学びと活動の幅が広がるよう支援してまいります。

家庭教育につきましては、大変な状況は続きますが、家族団らん、親子の対話の時間の確保を引き続きお願いしてまいります。


<むすび>

以上、平成27年度の主な重点施策を申し上げましたが、国、県、双葉地方が連携して、町民の皆様と行政が一体となり、大熊町の復旧・復興に取り組んでまいる所存であります。

今後とも議員各位をはじめ町民の皆様のご支援とご協力をお願い申し上げ、私の施政方針とします。



大熊町長 渡辺 利綱